写 真 : 阪 神 淡 路 大 震 災 に よ る 水 道 管 の 破 損 の 修 理 作 業 ( 写 真 提 供 : 神 戸 市 水 道 局 水 質 試 験 所 )
水 道 水 の 安 全 性 確 保 の た め の 精 度 管 理
兵 庫 県 下 の 水 道 水 は 、 平 成 5 年 1 2 月 に 施 行 さ れ た 水 道 法 の 水 質 基 準 に 基 づ き 、 衛 生 研 究 所 を は じ め と し て 、 指 定 検 査 機 関 や 各 水 道 事 業 体 で 検 査 さ れ て い ま す ( 衛 研 リ ポ ー ト 7 号 、 1 0 号 参 照 ) ま た そ の 結 果 は 年 度 別 事 業 報 告 書 等 で 公 表 さ れ て い ま す 。
≪ 測 定 値 の 信 頼 性 を 高 め る 精 度 管 理 ≫
水 質 検 査 の 結 果 は 水 道 水 の 安 全 性 を 保 証 す る 基 礎 と な る も の で す 。そ の 測 定 値 は 、正 確 で 信 頼 性 が 高 い こ と が 絶 対 的 条 件 に な り ま す 。 こ の た め に は 、 測 定 試 料 中 の 真 の 値 と 測 定 値 と の 差 ( 誤 差 ) を 小 さ く し 、 測 定 値 の バ ラ ツ キ ( 分 布 ) を 小 さ く す る 必 要 が あ り ま す 。 こ れ ら の 作 業 を 精 度 管 理 と い う の で す が 、 こ れ
に は 検 査 機 関 内 の 試 験 担 当 者 間 で の 精 度 を 均 一 化 す る た め の 内 部 精 度 管 理 と 各 検 査 機 関 の 間 で の 外 部 精 度 管 理 が あ り ま す 。
≪ 兵 庫 県 下 の 外 部 精 度 管 理 の 体 制 ≫
水 質 検 査 の 外 部 精 度 管 理
≪ 揮 発 性 有 機 塩 素 化 合 物 の 精 度 管 理 ≫
平 成 6 年 度 は 、 ク リ ー ニ ン グ や 金 属 の 洗 浄 に 使 用 さ れ て い る ト リ ク レ ン ( ト リ ク ロ ロ エ チ レ ン ) や ト ラ ク ロ ロ エ チ レ ン 等 の 揮 発 性 有 機 塩 素 化 合 物 4 物 質 に つ い て 外 部 精 度 管 理 を 行 い ま し た 。 参 加 機 関 は 、 1 7 機 関 で そ の 結 果 の 一 部 を 図 2 に 示 し ま す 。 真 の 値 ( 全 機 関 の 全 部 の 測 定 結 果 の 平 均 値 で 代 用 す る ) と 各 機 関 の 測 定 値 の 差 を 図 に 表 し て も の で す 。 ほ と ん ど の 機 関 で 平 均 値 か ら の ズ レ は 1 標 準 偏 差 値 以 内 に 収 ま っ て い ま し た 。 一 般 に は 、平 均 値 か ら の ズ レ は 2 標 準 偏 差 、 測 定 の 難 し い も の は 3 標 準 偏 差 ま で は 許 容 さ れ る の で 4 物 質 に つ い て は 、 参 加 1 7 機 関 の 測 定 値 の 正 確 さ と 信 頼 性 は 良 好 で あ っ た と 結 論 で き ま す 。 平 成 7 年 度 の 外 部 精 度 管 理 は カ ド ミ ウ ム や 鉛 等 の金 属 元 素 の分 析 について実 施 しました。 そ の 参 加 機 関 は 、 前 年 度 に 比 べ て 2 機 関 増 加 し 、 1 9 機 関 に な り ま し た 。 現 在 、 各 機 関 か ら 報 告 さ れ た 結 果 に つ い て 統 計 的 な 解 析 を 実 施 中 で あ り ま す 。
R 管 理 図
図 2 の 脚 注
横 軸 の 番 号 : 検 査 機 関 の 番 号
縦 軸 の 数 値 : そ れ ぞ れ の 濃 度 (ppb) 点 線 : 平 均 値 ± 1 標 準 偏 差
こ の よ う に し て 、 水 質 検 査 結 果 の 正 確 さ と 信 頼 性 を 高 め て 兵 庫 県 下 の 水 道 水 の 安 全 性 を 確 保 す る た め に 、 継 続 的 に 精 度 管 理 を 実 施 し て ゆ く 予 定 で す 。
性 感 染 症 の 現 状 ( そ の 2 )
< 最 近 のSTD>
戦 後 の STD の 中 心 的 疾 患 は 淋 菌 性 尿 道 炎 gonococcal urethritis(GU) で し た が 、近 年 の STD の 流 行 で は 、 非 淋 菌 性 尿 道 炎 nongonococcal urethritis(NGU)が中心と な っ て い ま す 。NGU の 主 要 な 原 因 微 生 物 と し て、 クラ ミシ ゙ア ト ラコ マチ ス Chlamydia trachomatis(CT), マ イ コ プ ラ ス ゙ マ ホ ミ ニ ス Mycoplasma hominis(MU),ウ レ ア フ ゚ ラ ス ゙ マ ウ リ ア リ ティカムUreaplasma urealyticum(UU) , 単 純 ヘ ル ペ スHerpes simplex virus(HSV) な ど が
明 ら か に さ れ て い ま す 。 欧 米 に お け る STD の 統 計 で は 、NGU は す で に 1957 年 頃 か ら 徐 々 に 増 加 が み ら れ 、1966 年 頃 か ら 急 増 し て お り 、世 界 的 なSTD の 流 行 が 認 め ら れ て い ま す 。 わ が 国 に お い て も こ の 傾 向 が 認 め ら れ 、 や は り NGU が 中 心 的 疾 患 と な っ て い ま す 。1990年 の 厚 生 省 感 染 症 サ ー ベ イ ラ ン ス の 報 告 ( 図 2 参 照 ) で は 、 ほ と ん ど の STD が 男 女 と も 過 去 最 多 の 1987 年 に 次 ぐ 数 と な っ て い ま す 。そ の う ち 、淋 病 様 疾 患 が 最 も 多 く 、 以 下 、 陰 部 ク ラ ミ ジ ア 症 、 陰 部
図 2 平 成 2 年 全 国 性 別 疾 患 別 発 生 状 況
( 厚 生 省 「 平 成 2 年 感 染 症 サ ー ベ イ ラ ン ス 事 業 年 報 」 の デ ー タ か ら 作 成 ) ヘ ル ペ ス 症 、 ト リ コ モ ナ ス 症 お よ び 尖 圭 コ ン
ジ ロ ー ム の 順 で あ り 、 全 体 で は 淋 病 様 疾 患 、 陰 部 ク ラ ミ ジ ア 症 、陰 部 ヘ ル ペ ス 症 が 増 加 し 、 尖 圭 コ ン ジ ロ ー ム は ほ と ん ど 変 わ ら ず 、 ト リ コ モ ナ ス 症 は 減 少 し て い ま す 。 年 齢 構 成 は い ず れ の 疾 患 も 性 活 動 の 盛 ん な20か ら29歳 が 最 も 多 く 、 特 に 女 性 の 場 合 は こ の 年 齢 層 が 最 多 で す 。 陰 部 ク ラ ミ ジ ア 症 は 年 々 増 加 を 続 け て お り 、 男 性 の STD 罹 患 総 数 の 32.9% 、 女 性 の 28.8% を 占 め て い ま す 。 兵 庫 県 感 染 症 サ ー ベ イ ラ ン ス の 報 告 で も 、 ほ ぼ 同 様 の 結 果 が 報 告 さ れ て い ま す 。 こ れ ら の 結 果 は あ く ま で も 届 出 を 受 け た 患 者 数 で あ り 、 そ の 実 際 の 罹 患 者 数 は 数 倍 か ら 十 数 倍 と 推 定 さ れ て い ま す 。 一 般 的 に 陰 部 ク ラ ミ ジ ア 症 は 淋 病 の 2 倍 の 罹 患 率 でSTDの 中 で も 多 い 疾 患 で す 。
尖 圭 コンジロー ムは、主 として外 陰 部 にみられ るイボの一 種 で、ヒト乳 頭 種 ウイルスの6型 あ る い は11型 に よ る 感 染 で 、大 部 分 が 性 行 為 で 感 染 し ま す 。ヒ ト 乳 頭 種 ウ イ ル スDNAが 外 陰 部 の悪 性 腫 瘍 からも検 出 されることから、子 宮 頚 部 癌 の発 生 との関 連 性 も注 目 されています。 ま た 、 抗 生 剤 投 与 に 伴 う 複 数 菌 感 染 も 問 題 と な っ て き て い ま す 。 一 方 、各 種 の ウ イ ル ス 性 肝 炎 、ATLお よ びAIDSもSTDと し て 注 目 さ れ て き て い ま す 。肝 炎 ウ イ ル ス に はA型 、B型 、 C型 な ど が あ り 、A型 は 経 口 的 に 、B、C型 は 血 液 や 体 液 を 介 し て STD 型 の 感 染 を 起 こ し ま す 。特 にB、C型 は キ ャ リ ア が 多 く 、わ が 国 に
お い て はB 型 で 人 口 の 2-3% 、C 型 で 1-2% と い わ れ て い ま す 。ATL は 九 州 南 西 地 方 や 全 国 の 海 岸 地 方 に 多 発 し て お り 、母 乳 に よ る 母 児 間 感 染 が 多 い の で す が 性 行 為 に よ る も の も 増 え て い て 、キ ャ リ ア が12万 人 と 推 定 さ れ て い ま す 。
AIDSに つ い て は 米 国 と ア フ リ カ お よ び ア ジ ア を 中 心 に 世 界 的 規 模 の 流 行 が 続 い て い ま す が 、わ が 国 で は1995年12月 末 現 在 の 累 計 と し て 、感 染 者3524人 患 者1154人 で 、感 染 に つ い て は 当 初 は 血 液 製 剤 に よ る も の が 大 半 を 占 め て い ま し た が 、現 在 で は 性 行 為 に よ る も の が 急 増 し て き て い ま す 。
写 真 陰 部 ク ラ ミ ジ ア 症 患 者 の 子 宮 頚 管 部 上 皮 細 胞 封 入 体 ( 封 入 体 の 中 に 増 殖 し た Chlamydiatra chomatis が 多 数 認 め ら れ る ) < 診 断 法 >
梅 毒 に つ い て は 血 清 学 的 診 断 法 の 進 歩 に よ り 、 か な り 明 確 な 診 断 が 可 能 と な っ て き て い ま す 。 淋 病 は 培 養 法 の 改 良 な ど が 診 断 に 寄 与 し て い ま す 。一 方 、NGUな ど のSTDの 診 断 法 の 進 歩 は 著 し く 、CT お よ び HSV に つ い て は モノクローナル抗 体 が 開 発 さ れ 、直 接 塗 抹 標 本 に よ る 迅 速 診 断 が 可 能 と な っ て い ま す 。 そ の 他 の 原 因 微 生 物 に つ い て も 最 新 の 科 学 技 術 を 導 入 し た 種 々 の 検 査 法 が 開 発 さ れ 、 迅 速 診 断 が 可 能 と な っ て き て い ま す 。
治 療 法 に つ い て は 、 種 々 の 抗 菌 剤 や 抗 生 剤 の 開 発 に よ り 、AIDSな ど 一 部 の 疾 患 を 除 い て
高 い 治 療 効 果 が 得 ら れ て い ま す 。 し か し 早 期 発 見 ・ 早 期 治 療 が 原 則 で あ る こ と は 言 う ま で も あ り ま せ ん 。
< お わ り に >
従 来 の 性 病 の 狭 義 の 概 念 が 、 性 感 染 症 の 広 義 の 概 念 へ と 変 わ り 、 科 学 技 術 の 発 展 に 伴 う 診 断 技 術 の 進 歩 と も 相 ま っ て 、 こ れ ま で 不 明 で あ っ た 疾 患 が 明 ら か に さ れ 、 中 心 と な る 疾 患 が 推 移 し て き て い ま す 。STD は 不 顕 性 感 染 ( 特 に 女 性 ) が 多 い こ と か ら 、 現 代 の 社 会 と 性 風 俗 の 変 化 に よ り 、 今 後 、 公 衆 衛 生 学 上 重 要 な 問 題 と な っ て く る と 思 わ れ ま す 。
( 微 生 物 部 : 小 野 一 男 )
本 誌 に 関 す る お 問 い あ わ せ は 下 記 に お 願 い し ま す 。